令和四年改正資金決済法におけるステーブルコインの法的位置付けについて

資金決済法の令和四年改正法「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」に準じ、現在のステーブルコインの法的位置についてまとめる。

ステーブルコインとは

Stablecoin: A crypto-assets that aims to maintain a stable value relative to a specified asset, or a pool or basket of assets.

Crypto-assets: A type of private digital asset that depends primarily on cryptography and distributed ledger or similar technology.

出典:FSB「Regulation, Supervision and Oversight of “Global Stablecoin” Arrangements」

特定の資産と関連して価値の安定を目的とするデジタルアセットで分散台帳技術(又はこれと類似の技術)を用いているもの

出典:金融審議会「資金決済ワーキンググループ 報告」第2章1(2)

ステーブルコインの分類

ステーブルコインはその価値安定の仕組みから以下のふた通りに分類される

  1. デジタルマネー類似型(= 電子決済手段)

    「通貨建資産」(資金決済法第2条第6項) ⇒ デジタルマネーとして規律

    法定通貨の価値と連動した価格(例:1コイン=1円)で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの(及びこれに準ずるもの)

  2. 暗号資産型

    「暗号資産」(資金決済法第2条第5項) ⇒ 暗号資産として規律

    デジタルマネー類似型以外(アルゴリズムで価値の安定を試みるもの等)

令和四年改正法は上記のうち「デジタルマネー類似型」を規制対象とするものであり、デジタルマネー類似型および既存のデジタルマネーにおいて「仲介者」(移転・管理を行う者)として「電子決済手段等取引業者」と「電子決済等取扱業者」を新設するもの。

デジタルマネー類似型における「発行者」とは「発行・償還する者」であり、その行為は為替取引に該当するため銀行業免許または資金移動業登録が必要である。この部分に関しては改正はない。ただし、信託受益権スキームが創設され、「特定信託会社」が「発行者」となることができるように改正された。

デジタルマネー類似型暗号資産型
発行者銀行・資金移動業者・特定信託会社 -
仲介者各種代行業者・電子決済手段等取引業者・電子決済等取扱業者暗号資産交換業者

また、通貨建資産は暗号資産には該当しないため、仲介者において暗号資産交換業の規律が及ばない。

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Topic: 資金移動業

資金移動業とは銀行以外の者が為替取引を業として営むことをいう。また為替取引とは「現金を直接受け渡すことなく取引する」ことであり、振込や口座振替もこれに該当する。

資金移動業を営むには資金決済法に基づき資金移動業者として登録する必要がある。従来の資金決済法で送金可能金額は上限100万円相当額とされていたが、令和三年改正法により第一種、第二種、第三種に分類され、第三種では上限5万円、第二種では上限100万円、第三種では上限なく送金ができるよう改正された。ただし、第一種資金移動業では厳格な滞留規制等が課されるなど従来よりもより厳しい規制がかかっている。

電子決済手段

改正資金決済法における電子決済手段の定義

この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)

三 特定信託受益権

四 前三号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの

このうち1号電子決済手段について、「電子機器その他の物に電子的方法により記録されており、電子情報処理組織を用いて移転することができる通貨建資産であって、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値」とまとめることができる。「通貨建資産」であると限定されている通り、「暗号資産型」のステーブルコインはこれに該当しない。また有価証券や前払い式支払い手段は電子決済手段からは除外される。また、資金同業者等が発行する既存の「電子マネー」等はこれに該当しない。

また、3号電子決済手段について、特定信託受益権の発行は「為替取引」に該当するため、現行法では銀行および資金移動業者のみが行える業であったが、本改正により新たに信託会社も行えるようになった。

参考